2020年3月議会 代表質問④評価育成システム、評価の賃金への反映、授業アンケートの評価への連動を早急に廃止することをもとめて

※代表質問1問目と2問目をアップします。答弁については議事録ができておりませんので、文字おこしが出来次第アップしたいと思います。

 つぎに、教育の問題ですが、市政方針では「教育のさらなる充実を図り、誰一人取り残さない教育の実現」をめざしておられます。しかし、教育の現場では評価育成システムなどがその障害となっています。よりよい教育現場をつくるため、教育の根本をゆがめる評価育成システム、評価の賃金への反映、授業アンケートの評価への連動を本市でも早急に廃止することをもとめてうかがいます。

 私たち日本共産党議員団では、先だって、小中学校教員の皆さんとの懇談の場を持ち、聞き取りをさせていただきました。また、お忙しい中、お電話での取材や休日出勤の合間などで短時間お話を聴かせていただくなど、学校現場の厳しさが改めて伺い知れるようなスケジュールの中、現場の声を聴いてきました。

 その中で、教員同士のチームワークを妨げ、学校現場をギスギスさせているものとして、評価育成システムの撤廃をもとめる声が非常に多くありました。

 2004年4月から教育現場に人事評価システムが導入され、大阪では「評価・育成システム」という名称で本格実施され、今年で16目となります。また、2006年4月に評価が直接賃金とリンクされるようになってからは13年目となります。そして今、この評価育成システムにより様々な弊害が起きています。

 府教委は、授業アンケート結果を利用して教員を被評価者として評価し、その評価結果を一時金(ボーナス)に反映することで、「意欲向上」につながるとしています。

 しかし、「意欲向上どころか、現場のチームワークが崩れ、校長が招集する会議で誰も意見を言わなくなった」、「学校運営や学級経営はチームワークがあってこその結果であるのに、一人の教員の成果として評価すること自体が問題」、「今までのように学級崩壊している他のクラスの応援に入る余裕はなくなった」、「自分の培ったノウハウを後輩に教えなくなった」、「校長に告げ口をする先生が増えた」、「子どもたちも先生同士のぎすぎすした雰囲気を感じ取り、校内全体が以前よりもぎすぎすしている」…など、教育現場の深刻な問題、子どもたちに与える影響が浮かび上がってきています。神戸の教職員のいじめ問題もこうした教育現場の抑圧が生み出した事件であるとも言われています。

 先年12月議会で、私は教員の異常な長時間労働の改善をもとめて質問しました。その中で、本来教員がやる必要のない仕事の削減が必要だという事も指摘しました。評価育成システムに反映させている授業アンケートなどもその一つです。

 本市では、様々なアンケートがとられていて教師はそのアンケートの回収作業まで請け負わされているとお聞きしていますが、市内の小中学校において、どのようなアンケートが実施されているのか、またその配布・回収経路についてお聞かせください。また、それぞれ、何を目的として行われていますか。

 アンケート結果は教員本人への授業評価も含めて、今後の改善に活かすために閲覧することができるのですか。また、授業アンケートをはじめとするアンケート結果が賃金査定にどのように影響しているのかお示しください。

 本来、日々の授業を行う上で、生徒の意見や要望に耳を傾け改善していくのは当然のことです。従来から、授業についてのアンケートは、教員の自主性のもと積極的に行われ授業にいかされてきました。

 しかし、評価・育成システムが導入されてから現在行われている授業アンケートは、教員の給料に影響を与えるという機能をもたせていることでアンケート本来の目的をゆがめ授業改善につながらないどころか、生徒と教師の関係を壊すものとなっています。

 現場からは、「教育とは人間を育てる営みなのに、“お客様アンケート”で顧客満足度を上げるサービスのように子どもたちを“消費者”扱いしては、まっとうな教育はできない」、といった声や、「授業アンケートは子どもたちの先生に対する好き嫌いが大きく関わる」、「アンケート結果は具体性がなく、授業改善へつなげにくい」、「必要に応じて厳しく子どもや保護者への指摘・援助ができる教員が正当に評価されるのか」といった懸念の声も出ています。

 今後、賃金に関わることに児童・生徒や保護者を巻き込むことは、やめるべきだと考えますが、見解をお聞きします。

  大阪府立高等学校教職員組合の要望を受けて府教育委員会は、2018年に評価・育成システムについての検証アンケート調査を実施しました。その調査結果をみますと、府教委が目的と言ってきた「教職員の意欲向上・資質向上」や「学校の活性化」について、全くと言っていいほど目的に役立っていない事がわかりました。

 システムについて、①「学校目標の共有につながっているか」という設問に対して、「つながっていない」との回答が、前回アンケート時の52.1%から66.8%に増加 ②「意欲・資質能力の向上につながっているか」の設問でも、「つながっていない」が65.3%から66.8%に増加、③「教育活動等の充実および学校の活性化につながっているか」では「つながっていない」が68.6%から72.5%など、すべての質問に対し、目的につながっていないとの答えが7割を超えています。

 圧倒的多数の教職員の反対を押し切って導入されたこのシステムが、15年以上経ってやはり、役立っていないという事は明白です。

 評価を賃金に反映させ、モチベーションをアップさせると言っていますが、教員に対する評価結果を一時金に反映させる仕組みは、まず、標準評価者であるA評価の教員も含めた全ての教員の「勤勉手当」から0.06月分と扶養手当分をカットし、それを原資として上位評価者(S・SS)だけに上乗せするというものです。

カットされた年額は一人平均3万6660円にもなり、下位評価者(B・C)はそこからさらに引き下げられます。

 評価育成システムは一時金の他、昇級にも反映されています。また、給料月額は年一回昇給しますが、その際、SS・S・A に差はありませんが、B評価をされると半分しか昇給せず、Cは昇給がありません。

 管理職による一方的な評価で生涯賃金に大きな差が出る仕組みであり、このようなシステムで、意欲が向上するわけがありません。

 評価育成システムが実施されてから、上位評価者は減る一方で、このシステムの目的が教員の「資質の向上」ではなく「人件費削減」にあるのは明らかです。

 本市での上位評価者、下位評価者の推移について詳しくお示しください。

 また、本市では誰が教員の賃金を決める評価者となっていますか。 

 ILOユネスコ共同専門家委員会が「根本的に再検討すべき」として2008年に勧告を出されており、島根県や秋田県では、評価制度は「教育現場になじまない」として、教育委員会が学校現場での賃金への反映はなじまないと判断をしています。

 島根県教育委員会の見解は、「学校現場における人事評価は、人材育成と組織の活性化を目的に実施し、定着してきており、以下の理由から給与への処遇反映はなじまない」とし、①多様な校種・職種のある学校において、給与に反映させる目的のもと、一律の評価項目、着眼点、評価基準を用いた人事評価制度の設計を行うことは困難。②学校現場における業績等の評価に際して、教育活動の成果は、最終的には児童生徒の変容に帰着するといえる。しかしながら、教育活動そのものは、各学校の教職員のチームワークで遂行され、また、児童生徒・保護者との相互関係にも大きく依存するものであり、教職員個人の業績のみと関連づけてとらえることはなじまない。③各学校の教職員が一体となって児童生徒の変容をめざした教育活動に取り組む学校現場にあって、人事評価を個人の給与に反映させることは学校現場のチームワークを阻害することにもなるとされています。

 この判断は、教育委員会として、現場の声を聴き、良く理解し出された判断だと感心します。

 近隣では堺市でも2017年春に見直しをされ、「評価・育成システム」での賃金リンクを廃止するなど、全国で自治体独自の判断で検証・見直しが進められています。

 本市では現在どのように評価育成システムが実施され、賃金への反映はどうなっていますか。

 評価された本人が自分自身の評価について情報開示をもとめることは可能ですか。評価について納得ができない場合は説明をもとめたり、苦情申請ができるのか、不服申請ができる場合は苦情申請を行うことで不利益な取り扱いを受けないなど保障されているか、苦情申請は何件程度あったか教えて下さい。

 また、今後、この評価育成システム、賃金リンク、授業アンケートの評価へのリンクは本市でも廃止することを強くもとめますが、いかがですか。府に対して強く廃止を求める必要があると考えますが、いかがですか。

  

【2問目】 4.評価育成システム、評価の賃金への反映、授業アンケートの評価への連動廃止を

 ご答弁ありがとうございます。教員の意欲や資質の向上につながるように・・・との表看板の裏で、教育そのものがゆがめられているのを感じます。

 様々なアンケートが、煩雑な事務となって教員の負担となっている状況もよく分かりました。

 先ほどのご答弁で、評価に対する苦情申請は全くないとのことでしたが、評価者に意見を言えば、それ自体が評価を下げることにつながるため、言えるはずはありません。校長が招集する校内会議で、誰も意見が言えなくなった、先輩教員に教えを請えば、それが校長に伝わり頼りないと評価に影響する、教えれば相手の評価を上げることになり、追い抜かされてしまう、など、みんな自分の事で精一杯の状況です。

 この評価育成システムが、先生同士のいじめ、子どもたちのいじめ、そして不登校や学級崩壊など、子どもたちを取り巻く環境に暗い影を落としています。

評価育成システムを始めとする評価主義の撤廃は、市単独では解決できない問題ですが、教育委員会は、現場の教職員が本当に子どもたちのために働ける環境をつくるため、教育活動に困難を持ち込み、不合理な成績主義賃金制度によって教職員から「教育の喜び」「教職員としての誇り」を奪い取るシステムの廃止・撤廃を今こそ求めるべきではないでしょうか。

 何よりも、子どもたちのゆたかな人間的成長のために、子ども・保護者・教職員の三者で支える教育、学校づくりが大切です。そうした教育環境を取り戻すため、府に対し評価育成システムの廃止を要望することを、強く求めておきます。

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